梅山茜
梅山茜

物流会社でEC発送代行のバックオフィス業務に従事する複業ライター。好奇心旺盛な性格で、過去に営業職や販売職、医療ソーシャルワーカーなどを経験。豊富な経験を活かして物流、医療・福祉、資格、ライフスタイル記事など幅広い分野の執筆を担当する。カテゴリー問わず、便利で使いやすい商品やサービスを求めて、ネットサーフィンを繰り返す日常を送る。趣味は旅行とレトロモダンなカフェ巡り。

物流システムの定義とは?種類や導入メリット、課題を解説

物流システム

物流システムの定義とは?種類や導入メリット、課題を解説

消費者に商品を適切に届けるためには「物流体制」の確立が重要なカギとなります。物流体制が整っていないと「商品が届かない」「商品が破損している」など、さまざまなトラブルが起こり得るためです。

物流システムの導入は物流体制の整備に有効だといわれており、商品を円滑に届けられる仕組みが確立できるだけでなく、顧客満足度向上への手助けになるでしょう。

本稿では、物流システムの定義や種類を解説し、物流システムの導入によるメリット、課題を紹介します。

物流システムとは|定義

物流システムとは|定義

物流には「輸送・保管・荷役・流通加工・包装・情報システム」の6機能が存在します。「物流システム」は、この6機能の運用を管理し、最適化する仕組み作りに効果的です。

物流の6機能は複雑に連携しており、単体業務だけを改善してもうまく機能しません。さまざまな物流システムを利用すれば、生産拠点・製造工場・物流倉庫の一元管理、受注・在庫・入出荷・輸配送まで管理できます。商品を届けるために、効率のよい方法を判断するなど、業務効率化の一翼を担うのが物流システムです。

物流体制に課題を感じる場合は、物流システムを活用し、効率的な仕組みの確立が改善への一歩となるでしょう。

代表的な物流システムの種類

ここからは、代表的な物流システムを4種類解説します。

  • 倉庫管理システム/在庫管理システム(WMS)
  • ピッキングシステム
  • 輸配送管理システム/運行管理システム(TMS)
  • EDIシステム

倉庫管理システム/在庫管理システム(WMS)

「倉庫管理システム」「在庫管理システム」とは、倉庫業務全般の管理システムのことです。英語訳の頭文字を取ってWMS(Warehouse Management System)とも呼ばれます。

WMSは商品・資材の入出庫や在庫数、棚卸業務など、倉庫内で必要な業務を効率化する機能が揃うシステムです。倉庫内のロケーション管理やピッキング時の導線を最適化する役割も担います。

在庫管理以外にも、商品の品質を保つための「製造日・原材料の情報・賞味(費)期限なども、正確に管理できる特徴があります。

システム導入されていれば、リアルタイムで在庫把握が可能なため、在庫の過不足を回避できるメリットも。販売の機会損失の防止も期待できるでしょう。

輸配送管理システム/運行管理システム(TMS)

「輸配送管理システム」「運行管理システム」とは、商品出荷~届け先に届くまでの過程を管理・サポートするためのシステムです。英語訳の「Transport Management System」の頭文字から、TMSとも呼ばれています。

TMSには配車や配送進捗、運送ルートの自動算出、実績管理などが機能として備わっています。配車手配やリードタイムの算出、出荷後の配送状況(渋滞・事故などの道路状況)をリアルタイムで把握可能です。

専用車載器があれば、走行距離・加減速度などの車両データをセンターにて取得、一元管理もできます。

TMSの利用によって、各車両の燃費やCO2排出量、ドライバーの運転方法や挙動などを「見える化」できるため、エコドライブの徹底や安全運転の指導などにも注力できます。

ピッキングシステム

ピッキングシステムとは、ピッキング作業を効率化する仕組みのことです。ピッキング作業を補助する役割、ピッキング作業を自動化する役割と大きく2つに分かれます。

①ピッキング作業を補助する役割

<システム例>

●      ハンディーターミナル、表示器

作業者の知識や経験が浅くとも、確実なピッキングが可能

②ピッキング作業を自動化するシステム

<システム例>

●      物流ロボット

作業者の代わりに、ロボットがピッキングするため、確実なピッキングが可能

人件費の削減につながる

EDIシステム

EDI(Electoronic Data Interchange)とは、直訳で「電子データ交換」を意味します。契約書や発注書、納品書、請求書などの書類を電子データ化したうえで、専用回線を活用し送受信できるシステムのことです。

従来、FAXやメールで行っていたアナログのやり取りが不要になり、事務員や作業員の業務負担の軽減につながります。データの一元管理ができるため、業務効率化にもつながるでしょう。

物流システムの提供形態

物流システムには多くの種類があり、メーカーによって提供形態も異なります。

WMS・TMSの提供形態には下表のとおり「オンプレミス」「クラウド」「パッケージ」の3つの型があり、運用の方向性によって提供形態を選ぶことが大切です。

オンプレミス型

●      システムの初期の型

●      自社施設内に必要な環境(サーバー機器・ソフトウェア)を整えたうえで利用する方法

<メリット>

●      カスタマイズの柔軟性

●      セキュリティ面の安全性

<デメリット>

●      導入コストが高い

●      カスタマイズのコストが都度発生する

●      実稼働までに時間がかかる

クラウド型

●      インターネット経由でシステムを利用する方法

●      PC内にインストール不要

<メリット>

●      月額利用料金制のメーカーが多く、利用料金が明確

●      初期費用が無料もしくは安価で導入しやすい

<デメリット>

●      カスタマイズ性に乏しい

●      オフライン環境では利用できない

パッケージ型

●      物流システムの提供メーカーよりソフトウェアを購入し、PCにインストールして利用する方法

<メリット>

●      インストールするだけで手軽に使用開始できる

●      安価に入手できる

<デメリット>

●      インストール済みのPCでしか利用できない

●      定期的な更新が必要

物流システムの導入メリット

物流システムの導入メリット

ここからは、物流システム活用のメリットを解説します。

  • 物流業務全体が「見える化」できる
  • サービスレベル向上に役立つ
  • コスト削減につながる

物流業務全体が「見える化」できる

物流システムの活用により、モノの動きが即時に把握できるため、物流業務全体が見える化できます。

全体が見えることで、具体的にどの工程で作業効率が低下しているのかなど、問題箇所が明確になるため、運用課題の把握が容易です。有効な対策が立てやすくなり、業務効率改善にもつながります。

作業単体だけでなく全体のフローが見えるため、物流業務全体の最適化が可能です。

サービスレベル向上に役立つ

物流システムの導入によって、モノの動きが正確に把握できる環境になります。リアルタイムで荷物状況がわかるため、顧客からの問合せなどに即座に対応できるメリットがあります。顧客の不満や不安な気持ちを即時に解消できることもあり、顧客満足度向上も期待できるでしょう。

また、業務効率化による納期や配送リードタイムの短縮により、商品が手元に届くタイミングが早められるため、サービス品質の向上にもつながります。

コスト削減につながる

物流システムは初回の導入コストがかかるものの、物流業務全体の見直しによる業務効率化によって生産性の向上が目指せるため、コストダウンも期待できます。

また、物流システム導入により作業の標準化ができることによって、経験の浅いスタッフでもすぐに即戦力になるため、人材教育にかけるコストや時間も削減できるでしょう。

物流システム導入時の課題

物流システム導入時の課題

物流システム導入によるメリットは大きいものの、注意点もあります。導入検討するうえで把握しておくとよいでしょう。

  • 既存システムとの適合性
  • 時間とコスト

既存システムとの適合性

物流システムの導入時には、すでに使用中のシステムと連携できるか適合性のチェックが必要です。連携できない場合、よいシステムでもうまく活用できないリスクがあるためです。

物流機能は常に連動しており、単体で完結する作業はあまり多くはありません。システムを最適化するためには、現状の物流体制を把握したうえで、自社に合ったシステムを検討することが大切です。

時間とコスト

物流システムの導入には、コストと時間が発生します。自社の物流体制に合っていないシステムを導入してしまうと、改善できないだけでなく、反対にコストが増加するリスクも。

また、システムを導入しても使いこなさなければ意味がありません。システムに慣れるには時間や労力がかかるため、導入時にはテスト期間を設けるなど、現場が困らないよう連携して進める必要があります。

自社に合ったシステムであるか判断するために、無料トライアルなどの利用も有効です。

物流システム導入の成功事例

物流システム導入の成功事例

ここからは、物流システム導入による成功事例を弊社(富士ロジテックホールディングス)の事例をもとに紹介します。導入検討の参考にしてください。

成功事例①:在庫水準の適正化で横持ち輸送の発生を回避

1つ目は、WMSの導入をはじめ、物流体制の再構築により適正化が図れた事例です。

①大手食品メーカーG社様

<現状>

工場・支店・全国の各店舗にて製品在庫を管理していた

<課題>

  1. 支店・店舗で出荷頻度が低い製品在庫を多く抱えていた
  2. 出荷頻度の高い製品の安全在庫水準にバラツキがあった
  3. 欠品回避のために支店間で製品の横持ち輸送が発生していた
  4. 工場への緊急生産オーダーに伴って輸送効率が低下していた

<改善内容>

●      工場、支店でのセット加工業務を廃止⇒倉庫での作業に切り替える

●      WMS導入による在庫の全社的な一元管理

●      支店を経由せず、工場周辺の倉庫から全国の店舗に製品を直接供給する

<成果>

  1. サプライチェーン上の在庫を大幅圧縮

 セット加工の廃止により支店は営業活動・工場は生産業務に専念可能に

  1. 直接供給により鮮度の高い製品を市場に投入可能に
  2. 直送化により横持ち輸送コストの削減
  3. 工場倉庫~店舗への直送化により輸送効率改善

成功事例②:ピッキングシステムによる生産性向上

2つ目は、ピッキングシステム導入による自動化で、生産性向上に成功した事例です。

②富士ロジテック 神奈川事業部(東名厚木物流センター)

<現状>

●      外資アパレルブランドの衣料品を扱う

●      約30店舗に向けた出荷、個人向けECの出荷を行っている

<課題>

紙のリストを手に持ち、片手作業によるピッキング作業

●      片手作業のため、畳んである商品状態が崩れやすい状況

●      崩れた商品を直して整えるなどのタイムロス(リードタイムの増加)

<改善内容>

●      音声検品対応WMS「VIPS」の導入

<成果>

●      音声ピッキングによって生産性が1.4倍に向上

●      音声ガイダンスで目視確認が不要、初心者でも簡単操作

●      両手が自由になり、高品質作業・作業効率の向上

●      ペーパーレス化で経費・資源の削減

●      業務効率化による、夜勤の廃止(人件費削減)

富士ロジテックホールディングスは自社WMSのほか、EC物流に強いWMSを導入しています。「ECサイトを成功へ導く最新在庫管理術 - API連携とWMSの活用法」の記事で詳しく解説しています。

富士ロジテックホールディングスでは物流業務の最適化提案が可能

富士ロジテックホールディングスでは物流業務の最適化提案が可能

物流システムとは、物流工程を管理するシステムです。物流システムの導入は、物流体制の改善に有効だといわれています。システム化することで、課題や改善点が発見しやすくなるためです。

とはいえ、導入にはコストや時間がかかるなどリスクも伴うため、自社の運用に合ったシステムを吟味したうえで導入することが大切です。

富士ロジテックホールディングスは創業100年以上の豊富な経験があり、物流業務の現状を確認したうえで、最適な提案が可能です。要望に合わせてシステムのカスタマイズを行っているため、現状の運用フローに課題を感じる企業様は、まずはお気軽にお問い合わせください。

 

<関連記事>「倉庫の作業を効率化する9つの方法!課題から見る改善のアイデアを解説

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梅山茜

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