2021年度ロジスティクス大賞 受賞! 物流向けRaaSの活用による庫内仕分けシェアリングサービスの実現(2/2)




株式会社富士ロジテック・ネクスト 
営業部部長 古川 貴史
http://www.fujilogitech-next.co.jp/




株式会社リンクス 
代表取締役 小橋 重信
https://www.linkth.co.jp/



小橋:前回に引き続き、富士ロジテック・ネクストさまにお話を伺いたいと思います。
今回もよろしくお願いいたします。

前回は、ロジスティクス大賞を受賞された内容についてのお話をいただきましたが、今回は、もう少し掘り下げたお話や苦労話などをお聞かせいただければと思います。

物流業務は、「物を仕入れて倉庫に入れて出荷する」動脈と、「(店舗またはお客様からの)返品」の静脈に分けられると思いますが、今回の静脈サービスはどのような形の提供になりますか?

古川:RaaSでは「t-Sort」と呼ばれるロボットを提供しています。もともとは、出荷機能をメインで使う予定でしたが、『バーコードを読むと指定の場所にシュートしてくれる』仕掛けのため、「返品としての使い方もできるよね」と、後から気づいた「気づき」から静脈系になりました。

また、モデルにしているお客様が年に2回、10万点の5,000SKUなどのアパレルの返品がありました。そこで、従来は人が場所と時間をかけて一生懸命作業していましたが、「ここにt-Sortを使えるのではないか?」というトライアルがありました。

SKUが多かったため、「まずは一部分からしてみよう」と試してみました。「弊社のシュート口は108シュートなので、108分のSKUのみ抱えて試してみよう」と試してみたら、生産性能力が従来の1/3ほどで完了しました。

「すごいな」と実力を実感し、「次のシーズンでは全部を試してみよう」と。
5,000SKUなので108シュートの場合、108シュートに複数SKUを落として、2回流すことも含めて試してみた結果、全体のコスト感でいくと約半分ほどで済みました。

サブスクサービスは、あくまで月額利用料で支払いをしていますが、その月額使用料分が1回の作業で十分手に入ります。

また、安く提供できるなら、お客様にも喜んでもらえるのではないか?と思いました。
「どのようなメリットがあるの?」という点では、

①場所が少なくて済む
②生産力が高いので作業の処理時間が短くて済む

上記、2点があります。
この2つのメリットだけで十分サービス力としてはありました。

次に考え方になりますが、今モデルのお客様がいるのですが、稼働率は100%ではないので、余力があります。そのため、固定の契約をとる必要がありません。

従来の契約では「返品の際は、必ず御社でしてください」との固定契約になっていたと思いますが、「何千ピース、何万ピース、何百ピースでもよく、瞬発の動きができるサービスにしていきたい」という思いから、シェアリングサービスの考え方にしました。

小橋:見る視点がいいですよね。動脈で店舗向けのソーターとして売り上げるとなると、日々の出荷に対応しなければならないため、きっちり契約して、物流会社を取り込まないとならないのに対し、静脈であればセール時期に大量に戻ってきた商品を、SKU別に仕分けられるというところで、多少時間の融通があるけれど、誰かが必ずしなければならない部分。

100店舗から返ってきたバラバラのSKUをもう1度集約して、棚にいれてピックできる状態にするまでの手間は相当ですよね。静脈であれば、お客様の大変な部分だけをサポートできるので、そのメリットは非常に大きいですね。くわえてロボットでの立証もされているので期待です。

古川:あとは、コストが下げられる点、時間短縮ができる点をポイントとして訴求していきたいですね。また今後は、返品を受けて、返品処理をしたあと、「この分のみアウトレットに出してほしい」といったニーズも想定されます。

そこに派生して対応できるようになると、二次サービス、三次サービスもできるようになるので、そのへんもターゲットに置きながら進めていきたいなと思っています。

小橋:返品ではなく売上の方に意識が向いている人が多いので、大変さを理解していないと、サービスの価値がなかなか伝わらないのではないか、とも思うのですが、いかがでしょうか?

古川:そうですね。今、「ワンプライスにしよう」と提案をしているのですが、保管・入荷・返品の入荷・出荷までに対して、「1ピースいくら」のワンプライスにしようかと検討していますが、対比になる元手を、ほとんどの方が持たれていないですね。

たとえば、「自分たちの空いているスペースに置いているから、お金はかかっていない」といわれる方もいますが、「いやいや、お金はかかっています」と。「そこにずっと置いておいても、機会ロスもお金も、どんどんかかっています」といった切り口で話しを進めていきたいのですが、そこまでなかなか理解していただけないのが、はがゆいところです。
なので、そういったお客様には「今シーズンは自分たちでしてみて、コストがいくらかかったか計算してみてください。その結果を1度教えてください。その金額より絶対に下げられます」といったセールスの仕方で売り込むしか、なかなか気持ち的には難しいところです。

小橋:まさにですね。返品でコストがかかっている意識は、やはりブランド側は低いので、実際に見ると、場所や時間がかかっており、とくに時間は再販のロスにもつながっているかもしれないことが、わかるかもしれませんね。

成功している会社さんは、物流がしっかり仕組み化されており、流れがキレイですね。経営もうまくいっている気がします。今の時代うまくいっている企業と、そうでない企業の違いは、静脈を考えているか否かですね。

古川:そうですね。コロナのこの時代の中で、かなり顕在化しているのではないかなと思っています。今後は再販のスピードが求められる時代になってくるため、サービス展開は実は今がいいタイミングなのかな、とも思っています。


小橋:第一弾では、店舗が売れずにクローズしたため、「ECだ!」となり、各社が倉庫に商品を戻した結果、返品処理が追いつかず、ECの出荷と返品対応に追われて、倉庫が大変だったという話しもよく聞きますね。

古川:そうですね。今、弊社でこのサービスを提供させてもらっているお客様は、「あるところで通販にシフトして、店舗から戻ってきたものを早めに処理をかけて、通販ですぐ売れるようにした」スピード感をもてているので、通販の売上は顕著で、数字をあげられているところも出てきています。

本当は、このあたりもしっかりアピールしていきたいのですが…。

小橋:そうですよね。なるべく手間をかけずに、いかに在庫をキャッシュに変えていくかですね。まさに今の時代に必要とされているサービスですよね。

違う見方をすると、「売って終わり」ではなく、必ず一定量戻ってくるので、どう再販して活かしていくかが重要ですね。

さきほどの話しのように、アウトレットにもっていく、いち早く用品として戻して売る、シーズンオフなら二次流通にする、海外で販売するなど、さまざまなことができますよね。
なるべく安く抑える配送も考えていらっしゃるのですか?

古川:そうですね。今、運送会社さんとのタイアップもできています。少し変わったスキームではありますが、先方に運送会社さんの伝票を送り、その伝票を返していただければ、特約を適用していただけるようなサービスです。

小橋:コストを下げるだけでなく、倉庫の中の返品オペレーションもおこなうということですね。すごいですね。今後の世の中は、静脈をしっかりおこなっている会社が伸びていくと思います。今回のサービスは、SDGs、サスティナブル支援にもなりますよね。

楽しみなのですが、気になるのが予算ですね。とくに身内の企業に対して、自分たちの返品物流にかかるコストや時間のあたりをみてもらえると、サービスを理解してもらえそうですね。

この先、なにかやっていきたいことなどはありますでしょうか?

古川:まず広くオープンに、セールスをかけていきたいですね。今回の受賞をきっかけに、「受賞事例見学会」を開催させてもらい、同業者・他業者さんも含めて、30社、50名ほどの方に、ご案内をさせていただきました。

そこで話しをすると、やはり「うんうん」と聞いていただけ、同業者さんからも「返品が大変なので、ここだけしてもらえないかな」という相談ももらえました。

こうしたきっかけも出てきたので、「みせるサービス」にもしていきたいなと考えています。同業者さんだと「見に行けない」といったケースも見られるので、こういった垣根も取り払いたいと思い、今回の見学会もオープンにさせていただきました。

今後は「見てみたい」という要望に対しても「どうぞどうぞ、見て行ってください」という入口を作っていきたいですね。もうひとつは、サービス自体が稼働率を上げれば上げるほど、生産力が上がり、御社から見ると収受力も上がるので、上がった収受力で、月間で還元できるようなやり方も、おもしろいなと思っています。

小橋:それはおもしろそうですね。「クーポン」のような感じがします。

古川:そうですね。たとえば「10万ピースを目標に、みなさん持ち寄ってください。10万ピースに到達したら、今の単価より1円下げてご案内しますよ」といった感じですかね。

小橋:物流の次のステップは、サービス業なので「どうしたらコストを安く抑えられるか」を考えていく「ダイナミックプライシング」の考え方が、これからの主流になってくる気がしているので、おもしろいですね。

古川:もうひとつRaaSのポイントは、台数を増やすこと自体は、言えばすぐに増やせます。拡張しつつ、ダイナミックプライシングのボーダーを決めつつ、やっていきたいですね。くわえて静脈のことも知ってもらえるよう、話しができるのが1番ですね。

小橋:これからですね。今まで物流会社は、とりあえずお客様から仕事を受けて、職人的に言われたことをこなしてきましたが、これだけビジネスが世の中複雑になってきているので、物流会社も積極的に発信していかないと、いい関係が築けていけませんね。
わかりました。今日は大変勉強になりました。ありがとうございました。

 

<動画はこちらからご覧ください>
https://www.youtube.com/watch?v=FxBKU-Klly8

 

<プロフィール>
株式会社富士ロジテック・ネクスト 営業部部長 古川 貴史

2002年11月 株式会社富士ロジテック(現株式会社富士ロジテックホールディングス)子会社の株式会社富士ロジ・オペレーションシステムへ入社

2014年9月 株式会社富士ロジテック(現株式会社富士ロジテックホールディングス)より分社の株式会社富士ロジテック・ネクスト設立に伴い、同社営業部部長を務める。

アパレル、雑貨等の消費財物流と通販物流を中心に営業活動を展開。

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